私の一冊

旅の窓

沢木耕太郎:著 幻冬舎文庫

推薦者:大戸修二

 旅をテーマにする作家は割と多い。なかでもノンフィクション作家・沢木耕太郎の著書には愛着がわく。私の海外への一人旅も、たぶん80年代に出た『深夜特急』シリーズに触発されたのがきっかけだったと思う。

 今年春、本屋で見つけたのが文庫本『旅の窓』。旅先で自ら撮ったスナップ写真81枚について、その時の思いをつづっていて、その場に引き込まれるような臨場感がある。表紙(=写真)に使われているのはパリでの1枚だ。空港へのバスでたまたま乗り合わせた幼い男の子が、何かに気づき、その何かに向かってガラス窓の方向に手を差し伸ばしはじめた。その一瞬を撮ったもので、タイトルは「その手の先に」。

 私事だが、旅先で時々の思いに駆られて撮ったスナップ写真が捨てられずにある。この本を読み終え、ふと、本箱や引き出しの中で眠ったままのそれらを選り分けて、何らかの形として甦らせてみたいと思った。


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