主張

地方分権勢力は結集を

平峯 悠

◇一極集中は加速しているが

今年3月に人口問題研究所から発表された2045年地域別将来推計では、人口は1億0,642万人(約2000万人減)、65歳以上が36%、地域別では東京以外で減少。秋田、青森、山形、高知各県の減少率が高い。一極集中と極端な高齢化は大きな問題ではあるが、このような推計の結果に振り回されるのにはもう飽き飽きした。首都圏での通勤や交通問題あるいは保育園・老人介護も大きな社会問題ではあるが、各地方はその現実を謙虚に受け止め、工夫と知恵を働かせて既に対応策を模索している。戦後の中央集権体制による一極集中は、ITやAIなどの技術革新もあり曲がり角に来ている。

◇効果のない政策

驚異的な高度成長を成し遂げた日本が、地方分権の必要性を打ち出したのは平成6年の地方分権推進法である。政官財癒着構造と縦割り行政の是正、地方自治体の行政責任の明確化、中央政府の機能純化、東京一極集中の是正など立派なお題目は並んでいるが、24年経過してもその効果はほとんど出ていない。霞が関主導の東北大震災の復興で、震災3県では人口減少に拍車がかかり、東北地方が持ち続けた日本の原風景も消えようとしている。最近では、日本版CCRCにより首都圏から高齢者を移住させるという愚策が議論される。メディアや印刷業界は東京に集中し、日本をリードすべき学者や知識人も首都圏に安住し地方の実態を表面的にしかとらえない。平成25年3月の「地方分権改革有識者会議」も東京の視点でしか判断できない人選と言ったら言い過ぎか。要するに地方分権への有効な政策が実行されるには至らない。

◇歴史の中で繰り返される統治機構

日本の統治機構は中央集権と地方分権が交互に現れる。大和朝廷による中央集権律令国家に始まり、戦国期をから徹底した地方分権の江戸期を経て、明治維新から現在の中央集権体制が循環している。徳川家は大名同盟の盟主に過ぎず、行政機関である幕府機構は自領の行政のみで幕府の司法権は各藩に及ばず、300近い藩は独自の藩校による教育の充実を図る。また幕府の天領の税率は「四公六民」程度の「小さな政府」であった。それに比較するに現在の日本は中央政府主導の大規模公共事業は終焉し、比較的「小さな政府」になっている。しかし権限と財源は一向に改善されず、それが地方の疲弊・衰退を招き、一極集中の原因である。

◇地方分権の視点

中央集権による一極集中と対峙する地方分権は、司馬遼太郎氏のいう文化のパワーを重視することから始まる。すなわち各地域の伝統文化や歴史そのものが大きなパワーを持っており、それを活用発展させることを地方分権の出発点としたい。

  1. 独自の教育が支える地域の文化・伝統を継承し風土産業の再生により雇用を生み出し活性化を図る、

  2. 地域のことは地域でという地方自治の「補完性の原則」を守り多様な地域を作り出す、

  3. 地方からの人材の流出を防止し地方の独自性を確保する、

  4. 地方分権を阻む政府・行政機関の権限と財源を是正する(最も難しいが)、

  5. 結果的に首都圏・大都市圏での子育て、働き方、老人介護などの社会問題を軽減する。

◇地方分権勢力の結集

明治維新から150年、現在の中央集権体制は現自民党と官僚組織によって維持されてきた。それに対抗する勢力は体制批判と信仰?に近い「護憲」でしか存在を示し得ていない。このような情けない状況を打破するには新たな対抗勢力をつくる以外にはない。そのキーワードは「道州制を見据えた地方分権」であろう。国会議員、地方議員等の政治勢力、各地域の首長、国土・地域・都市を研究対象とする学者、知識人、NPOなどが結集して地方分権を柱とする「国のかたち」を真剣に議論する時期に来たと考える。インバウンドによる日本の地域文化の再認識が始まり、また自民党政権や霞が関の官僚機構の劣化を視るにつけ、今こそ地方分権勢力結集のチャンスであると思う。


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